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乗っかってガッポリ稼ぐ工場長『ビンジョー×コウジョー』

2016年のゲームマーケット大賞を受賞した『ビンジョー×コウジョー』作者すまいる120円さんインタビュー

2016年のゲームマーケット大賞を受賞した『ビンジョー×コウジョー』を、もう遊びましたか? 自分の工場に生産ラインを整えて製造物を受注して資金を稼いでいく育成型ゲームですが、受注カードの引き運だけでなく、他人の受注に「便乗」して資金を稼ぐ「乗っかり」が面白いんですよね。その作者・すまいる120円さんに、このゲームを作ったいきさつなどを直撃しました。

『ビンジョー×コウジョー』『ビンジョー×コウジョー』 3~4人用ゲームでプレイ時間は40~60分程度。価格は2000円。

ひとりきりの工房で安産!?

現在、京都在住の大学4年生というすまいる120円さん。サークル名はすまいる120円工房と名乗りつつも、アイデア出しからデザイン、イラスト、制作まですべてひとり行う個人プロジェクトで、最初のゲームは小学生のころに作り始めたとのこと。販売するゲームパッケージとしては、2015年春のゲームマーケットで1作目『ススムカ&モドルカ』を発表。翌年のゲームマーケット2016神戸で2作目『ビンジョー×コウジョー』を出して、その年のゲームマーケット大賞を受賞しました。最初に作った数量はもはや完売状態で、2月のゲームマーケット2017神戸にて再販するためにクラウドファンディングで資金調達したところ、瞬く間に目標金額を達成。ファンの間からは「すまいる120万円」さんとあだ名されるほど、いま最注目のゲームクリエイターです。

――まず作者本人からゲームの紹介をお願いします。

『ビンジョー×コウジョー』は工場を拡張していくゲームです。最大3つの生産ラインを作っていくんですが、他人が引いた受注カードが自分の工場でも生産可能な状態なら、「ビンジョー!」と挙手で宣言して相乗り生産して資金を獲得できるのがミソです。

最初はコストのかからない職人を雇い入れることになりますが、1回生産が終わると職人は帰ってしまいます。資金を使って設備を購入すれば時間の経過(ターン進行)とともに生産準備が整いますが、安い設備は準備に時間がかかり(最長3ターン待ち)、高い設備は1ターンで完了するので「ビンジョー!」できる機会がぐーんと増えます。この設備は一度設置したら捨てることができないので、安くて遅い設備をいち早くに入手するか、コツコツ資金を貯めても高くて速い設備を狙うか、思案のしどころですね。

また資金を増資することで、発注カードを引く枚数を最初の2枚から最大5枚まで増やすことができます。工場の製造ラインは3つですから、一度に3つまでしか生産はできませんが、引ける枚数が多いほど自分の工場に合う一番高い発注カードが選びやすくなります。また、他人に「ビンジョー!」されないようにオーダーを選ぶこともできます。最終的な勝利条件は最大値60まで増資することなので、高い設備を狙ってばかりでは後手を引くかもしれません。

すまいる120円さんのゲーム工房の様子すまいる120円さんのゲーム工房の様子。ゲームのアイデアを最初は厚紙などで具体化して友人を集めてテストプレイを重ねているという。

――このゲームを作り始めたのはいつごろから?

まず「ビンジョー!」というアイデアが先にあって、「工場」はあとから出てきたんです。便乗(びんじょう)とも語呂がいいし、一作目もダジャレのタイトルが好評だったからアリだなと。このアイデアは一作目を売り出した直後からありました。ぼくらの界隈では「安産」って言うんですが、アイデアからすんなり形になりましたね。

他人に便乗して乗っかって稼ぐってそれだけで楽しいし、アナログゲームっていわゆる「ダウンタイム」があるじゃないですか。他人が何かしている間、自分では何もできないという。それを便乗というシステムが解決できるんじゃないかと考えました。

――他人がプレイしてる間に自分の工場もラインが1つ進むし、生産体制が整ってしまえば誰が何を受注するか注目して、「さあ来い、便乗してやるぞ!」ってワクワクして待てるところが楽しいですね。

一番高い設備は1ターンで準備が完了するので、生産ラインの1工程目に置くと他人に便乗しやすいんです。そのあたりは一度遊ぶとすぐに気づくと思います。そういう気づきというかゲームの学習曲線みたいなものは、テストプレイを繰り返しながらいいバランスを見つけていったという感じですね。

あと、一番高い受注カードは4種類の設備をフルに使うので、売り上げもすごく高くて便乗でもかなりの額が入ってきます。この4種類の生産ラインをいつどのタイミングで完成させて、生産可能な体制を維持しておくか、あるいはどこかで見切ってほかの受注カードで使ってしまうか。悩ましい(笑)

――あーそれ、自分がプレイした時にもありました。4種類の生産ラインを使った直後にこの発注カードが出るとすっごく悔しいですよね。

そうですね。誰か1人だけがこの高いカードを作って儲けるなら「運ゲー」って言われてしまいがちなんですが、便乗できるので他人も資金を獲得できるチャンスがある。そこでバランスが取れてると思います。発注カードの枚数や必要な設備は工場シートに書いてあるので、一度出た発注カードを覚えておくカウンティングも有効ですよ。

影響を受けた宝石と街のあのゲーム

ゲーム中盤になると、工場のラインに設備が充実 ゲーム中盤になると、工場のラインに設備が充実する。1ターンで準備完了する高価な設備を早く入手したいが、安い設備も地味に必要で……。

――自分でプレイしていて感じたのは、中盤から資金獲得がスピードアップしていって、『宝石の煌めき』に近い快感がありますね。

ゲームが加速していく、資金獲得の確率が上がっていくということは、自分の育てた工場が正しく評価されるということで、そのあたりの気持ちよさは大事にしました。

宝石の煌めき』は一番と言っていいほど影響を受けましたね。半分くらいゲームが出来上がってきたところで初めて遊んだんですが。それまではテキストのあるゲームのほうが好きだったんですけど、『宝石の煌めき』をプレイしてみて文章がなくても「単純にこの宝石が欲しい」「集めたい」っていう欲求を満たすシンプルなゲームはやっぱりいいな、って再確認しました。

もう一つ影響を受けたのは『街コロ』ですね。ライトに遊ばせながらも、戦略を深くするにはどうしたらいいか。そこを考えたときに、運の要素を残しながら便乗する戦略でカバーできる部分を高めていくのがいいんだろうな、と。

それらがあって今のビンジョー×コウジョーの形になりました。

――『宝石の煌めき』は他人の狙いを先読みして意地悪な奪い合いになりがちですが、『ビンジョー×コウジョー』は発注に乗っかるだけで他人の邪魔をするわけじゃないから、もう少しほのぼのしたゲーム展開になりやすいですね(笑) では、今ハマっているゲームがあれば教えてください。

いま気になってるのは『桜降る代に決闘を』という、決闘をテーマにしたトレーディングカードゲームです。もともとこういうゲームを作りたいとは思っていたんですが凍結してるプロジェクトがあって、遊んでみたらうまくまとまってて、面白いな~と。

桜降る代に決闘を

『桜降る代に決闘を』
http://bakafire.main.jp/furuyo/

拡張版と次回作はゲムマ神戸で

――ビンジョー×コウジョーの今後の予定は?

2月のゲームマーケット2017神戸で再販することが決まってます。クラウドファンディングに申し込んでいただいた方には拡張キット付きでお送りしますが、神戸ではオリジナルの再販分と別売りの『拡張版』の形で用意します。

拡張版の内容は、新たな効果を持つ「設備タイル」と短時間で遊ぶための「スタートアップタイル」になります。プレイヤーから「もう少し短時間に決着するルールが欲しい」という声をいただいたので、それに応えるのがスタートアップタイルです。先にいくつかの設備が置いてあって、そこからどうやって工場を発展させるか競い合うイメージですね。

――それ以外の新作の予定は?

ゲームマーケット2017神戸に出す次回作として、図鑑ゲームを作っています。『宇宙図鑑』というタイトルなんですが、図鑑を片手に旅しながら宇宙の秘密を探っていこうとするゲームです。楽しみにしていてください。

次回作『宇宙図鑑』のタイトル

次回作『宇宙図鑑』の開発中の画面


すまいる120円さんは、この春大学を卒業して就職も決まっているそうだが、その後もゲーム制作は続けられる見込みだという。今後の活躍から目が離せないクリエイターなので、機会があればぜひ『ビンジョー×コウジョー』を遊んでみてほしい!

すまいる120円さん すまいる120円さん。写真は恥ずかしいので、自作のアイコンイラストで代用してほしいとのこと。

すまいる120円さんのブログ
http://sssaikou2003.blogspot.jp/

すまいる120円さんのTwitter
https://twitter.com/sssaikou2003

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元IT系出版社の編集者。退職後に人狼やアナログゲームに ハマって各種イベントやボードゲームカフェに出没している。
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