ボードゲームカフェと風営法の関係を弁護士さんに聞いてみた

ボードゲームカフェと風営法の関係を弁護士さんに聞いてみた

こんにちは、JELLY JELLY CAFEの白坂です。

二人用アグリコラ(フタリコラ)
フタリコラ(2人専用アグリコラ)中に失礼いたします。

近年、東京を中心に「ボードゲームカフェ」がすごい勢いで増えております。色々なお店がオープンしていく一方で、最近こういう声もよく耳にするようになりました。

「風営法って大丈夫なの?」

ボードゲームカフェは「お客さんが自由にゲームで遊ぶことができる」、という点で通常のカフェに比べると特殊な業態なのですが、数年前までは日本ではほとんど無かったため、風営法についての情報が少なく、ネットで検索してもなかなか「これだ!」、というページにたどり着けませんでした。

そこで今回は、弁護士さんに「ボードゲームカフェと風営法」について色々と聞いてみました。

今回お話を聞いた弁護士さん

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土肥健太郎 (第二東京弁護士会)
土肥法律事務所
http://dtlo.jp/
2009年12月 司法修習を経て都内法律事務所に勤務。
2013年3月 千代田区半蔵門に土肥法律事務所を開設。
弁護士2名で中小企業顧問業務及び訴訟業務を中心に執務を行う。

白坂

今日はよろしくお願いします!

土肥

こちらこそ、よろしくお願いします。

風営法について

白坂

そもそもボードゲームカフェの業態はどういうジャンルの店舗になるのでしょうか。

土肥

新しい形態の店舗ですので、一概には言い難いところがありますが、酒類等の食品を提供している点に着目すれば飲食店営業になります。また、夜10時以降もお酒の提供をしている場合は、風営法上の禁止行為もあります。といっても、客引きの禁止、未成年者への酒類等の提供の禁止などですので、ボードゲームカフェ店舗では気を付けるべき点は少ないと思います。

白坂

食べ物がなく、飲み物の提供だけでも飲食店の営業許可が必要なんですよね。お酒を出したりする場合も、特に追加で申請は必要ないんですよね。

土肥

そうですね。酒類の販売をする場合は、原則として税務署長からの販売業免許が必要なのですが、お客さんがお店で飲むために提供するのであれば、販売業免許は要りませんので、追加の申請などはいりません。

白坂

なるほど。ではボードゲームカフェという特殊な業態に関する質問なのですが、ゲームの種類によっては、プレイ人数が決まっていて、人数に満たない場合に「卓に入ってくれませんか?」とお客さんに言われることがあるのですが、スタッフがお客さんとゲームをするのは風営法上問題ないのでしょうか。

土肥

「JELLY JELLY CAFE」でのスタッフとお客さんの接し方であれば、問題ないと考えています。白坂さんが気になっている「スタッフとお客さんが一緒にゲームする」という点は、風営法上「風俗営業」とされ許可の対象となる「接待飲食等営業」にあたるかという点だと思います。このうち「飲食店営業」であることは先ほどの話題で出てきましたので、「スタッフとお客さんが一緒にゲームする」というのが「接待」にあたるかどうかがポイントになります。

白坂

なるほど、接待かどうかは何が基準になっているのでしょうか?

土肥

風営法2条3号に定義があり「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすことをいう。」とされています。

白坂

なんだかふわっとした規定ですね……。

土肥

確かにわかりづらいですよね。もう少し詳しい書き方をしたものもあります。「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため営業者側の積極的な行為として相手を特定して(談笑・お酌等)(ショー等)(歌唱等)(ダンス)(遊戯等)(その他)のような興趣を添える会話やサービス等を行うこと」とされています。

白坂

ということは、お客さんとスタッフとがお遊ぶことがメインのお店だとNG、ということでしょうか。

土肥

そうですね。お店としてサービスのメインをどこに据えるかは重要だと思います。
まず「ゲーム」をすることを目的に来店しているお客さんが、希望のゲームを遊ぶためにどうしても人数が足りないような場合スタッフが入るのであれば、店員とお客さんが「遊戯(ゲーム)」をしてはいても、先ほどの解説の前半「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため」という部分が欠けているので、「接待」には当たらないと思います。
このようにお店ととして「お客さんにボードゲーム自体を楽しんでもらう」ことをメインにしていれば、歓楽的雰囲気は生じることはないでしょう。
他方で、お客さんが店員とゲームをすることをメインのサービスにすると、お客さんはいまのボードゲームカフェのように「ボードゲーム」をすることを目的とせず、「店員と遊ぶこと」を目的に来店するようになると思います。この場合は、「営業者、従業者等との会話やサービス等慰安や歓楽を期待して来店する客に対して、その気持ちに応えるため」という部分にも当たるようになってきます。また,お店もお客さんのニーズにこたえるためにお客さんが好みそうな店員を配置したり、ゲームも「面白いゲーム」ではなく「会話が弾むゲーム」を揃えたりといった趣向に偏ってくるのではないでしょうか。看板は上のものと同じ「ボードゲームカフェ」であっても、結果的に、その店の雰囲気も歓楽的になりますので、「接待飲食等営業」とみなさざるをえなくなると思います。

白坂

なるほど。スタッフがお客さんにルール説明するというのも「接待」にはあたらないですか?

土肥

そうですね。その場合は勿論、ゲームに参加しない進行役をスタッフがやる場合も「遊戯」もしていないのですから問題ないと思います。

白坂

では、勤務終了後のスタッフや非番のスタッフなど、勤務中じゃないスタッフがお客さんと一緒に遊ぶのはどうでしょうか?

土肥

勤務中かどうかは大きな要素ではないと思います。仮に、先ほどの歓楽的雰囲気があるような場合、一緒にゲームしているのは非番のスタッフだから「接待」じゃないという言い訳は通用しないように思います。接待をする人がその店に雇用されていなくても「接待」になりますので。
やはり、歓楽的雰囲気を醸し出すもてなしかどうかがポイントです。

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白坂

ボードゲームカフェには、ひとりで来るお客さんも多くいらっしゃいます。お客さん同士の相席を勧めることがあるのですが、問題はありますか?

土肥

それも問題ないですね。基本的に客同士でゲームを行わせることは「接待」にあたりません。

賭博罪との関係について

白坂

賭博に関することで聞きたいのですが、お客さん同士でゲームをした結果、お金のやり取りをするのはNGですよね?

土肥

はい。刑法の賭博罪にあたるのでNGです。

白坂

じゃあ例えば、ゲームで負けたらドリンクをおごる、とかもNGですか?

土肥

その場合は、程度にもよりますがOKです。
「賭博」とは、偶然の事情に関して物やお金を賭けて勝敗を争うことをいいます。ドリンクもれっきとした財産的価値のある物ですので、賭博罪が成立しそうに思えますが、例外があり、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるとき」は犯罪にはなりません。この「一時の娯楽に供する物」とは、価格が低く、すぐに飲み食いで費消されてしまうものと考えられており、ドリンクやお菓子といった程度の物であれば問題ありません。ただし、「程度」によりますので、「飲み物であればなんでもOK」ではないことは注意が必要です。

白坂

たとえばボードゲーム大会を行い、お店の割引券や無料券を商品として出す場合は賭博にあたりませんか?

土肥

「JELLY JELLY CAFE」で行っているように入場料のみで大会をして、賞品をだすようなものは全く問題ありません。もちろん、大会参加費をとること自体は問題ないですが、それが会場使用料や提供される飲食代金分にとどまらず、高額な金券や品物を賞品とするためにお金を集めているような場合は、注意が必要だと思います。高額な賞品を景品とすると、先ほどの一時の娯楽に供する物ではなくなり、参加費も掛け金だとみなされるおそれがあると思います。

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著作権について

白坂

ちなみにボードゲームの著作権はどうなっているのでしょうか?お店に置いてあるボードゲームの権利はどうなっているのでしょうか?

土肥

ボードゲーム、カードゲームは、ボード、駒、カード自体と遊ぶためのルールで構成されています。まず、ルールはアイデアに過ぎず、著作物ではないと考えられています。ボードや駒、カードのデザインは著作物にあたるものも多くあると思います。しかし、著作権の及ぶデザインのカードを使って遊ぶことは「著作物の使用」であって著作権者の許諾は要りません。マンガ喫茶の例を思い浮かべるといいかも知れません。
一方で、テレビゲームの場合は、遊ぶうえでテレビその他の画面に映像を映し出さなくてはならず、著作物の利用にあたる行為がある点で、同じゲームでも違いあります。

白坂

なるほど。風営法や賭博罪との関係に関してとてもよくわかりました。ありがとうございました!

いかがでしたでしょうか

ボードゲームスペースの運営者さん、今後ボードゲームカフェなどの運営を考えてる方の参考になれば幸いです!

協力

土肥法律事務所
http://dtlo.jp/

JELLY JELLY CAFEのオーナーです。日本中にボードゲームカフェができる日を夢見て日々がんばっています。
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