「ゴチでーす!」 居酒屋で遊びたい『たのめナイン』

ゲームマーケット大賞 優秀賞の『たのめナイン』などの味わいゲームを量産する「するめデイズ」の原動力は?

たのめナイン『たのめナイン』。2~5人用で1800円。

隣の人が好きそうなものベスト5を勝手に予想し合う、自己紹介やアイスブレイキングにピッタリな『曖昧フェイバリットシングス』。マンガの効果音=擬音をカードの組み合わせで作ってそれに見合うシチュエーションをプレゼンする大喜利ゲーム『擬音フェスティバル』――などなど、ユニークなゲームを続々発表する「するめデイズ」。

シンプルなルールで初プレイでもとっつきやすく、それでいて繰り返し楽しめる。「こういうときに遊ぶと、絶対楽しいし盛り上がる!」というプレイシーンが想像しやすいゲームを生み出す人気のゲームクリエイターサークルです。中でも2015年春にリリースされた『たのめナイン』は2016年のゲームマーケット大賞で優秀賞を受賞して、一気にブレイクしました。

それぞれ得意分野や好きなゲームジャンルも異なる、個性豊かなクリエイターが集まったするめデイズから、今回はチカールさん、ニルギリさん、ペペRさんの3人に、池袋・JELLY JELLY CAFEに集まっていただき、サークルの成り立ちや『たのめナイン』の開発秘話をお聞きしました。

独立採算で面白ゲームを量産

するめデイズのみなさん

チカールさん(写真右)
今回メインで話をお聞きした『たのめナイン』をはじめ、『モンスカート』『せっかちプリンセス』『Quadra~クアドラ』の制作を担当。好きなゲームは『曖昧フェイバリットシングス』。

ニルギリさん(写真中央)
曖昧フェイバリットシングス』を制作。イチオシのゲームは『擬音フェスティバル』だそうです。

ペペRさん(写真左)
ブログサイトの制作やキャッチフレーズ、販売などを担当する。ゲームの内容がわかりやすくて記憶に残る語呂のいいフレーズはペペRさんのセンスによるもの。

このほかに『擬音フェスティバル』を制作したさいころKさん、イラスト制作と流通・販売・会計を担当するユタさんの5人で構成されるするめデイズ。サークルといっても共同でゲームを製作するのではなく、集まって意見交換やテストプレイはするものの、アイデア出しから制作までそれぞれが各タイトルを担当。経費や売り上げなどの財布も個別に管理しているそうです。

 

――まず、するめデイズというサークルが産まれた経緯を教えてください。

チカールさん ユタさんだけ後から参加したんですが、ほかの4人はもともと『キャッチマインド』というオンラインゲームで知り合い、つながりのあった10年来の知り合いなんです。北海道とか名古屋とか住む場所はバラバラだったんですが、たまたまみんなが東京に引っ越して集まりました。

――以前からゲームを作っていたんですか?

チカール 最初にボクは「吉々庵」という別のサークルでゲームマーケットに初出展し、そこに今のメンバーが遊びに来てくれたのがきっかけですね。「自分たちも作ってみたい!」と言ってくれたので、新たなサークルを立ち上げることになりました。

ニルギリさん チカールさんの作った『Quadra』がすごく面白くて、自分でもゲームを作ってみたくなって。ほかのメンバーもゲーム作り経験はなかったので、チカールさんにノウハウを教えてもらいながら始めました。

チカールさんが吉々庵で作った対戦ゲーム『Quadra』チカールさんが吉々庵で作った対戦ゲーム『Quadra』。4色のカードで4色のコマを動かして相手の陣地を狙う対戦ゲーム。動かせるコマは手札から場にセットした2枚のカードで決まるため、お互いに相手の最適手を読み合う、詰め将棋のような先読み感覚が楽しい!

ペペRさん 喫茶店で「こんなゲームがあったら面白いよね」ってアイデアを出して盛り上がりながら、覚えやすい名前をどうするか、サークル名も必要だねって話になって、話し合いの末に、一目でわかるイカちゃんのロゴを作りました。そうして2015年秋のゲームマーケットにサークルで初参加し、販売したのが『たのめナイン』『曖昧フェイバリットシングス』『擬音フェスティバル』の3作でした。

チカール 駆け出しのサークルだったにもかかわらず、その3つがいずれもゲームマーケット大賞にノミネートされることになってビックリしました! 最終的にはその中から『たのめナイン』が優秀賞をいただくことになって、本当に光栄なかぎりです。

するめデイズさんが制作したゲームするめデイズさんが制作したゲームの数々。

マンガのマニュアルと電卓アプリで明朗会計!

――では、作者のチカールさんから『たのめナイン』を紹介していただけますか。

チカール 居酒屋をモチーフにした、手軽に楽しめるカードゲームです。みんなで飲みに行って、好きなものを注文して飲んで食べて、ちょうど切りのいい金額にできたら「ごちです!」って叫んで、前の人に伝票を押し付けられるというパーティ系のゲームです。

ルールはシンプルで、5枚の手札から1枚出して料理を注文していきます。すでに出ている料理はオーダーできません。居酒屋で同じものを頼んだらブーイングですからね(笑) そうして2000~4000円のいずれかキリのいい合計金額になったら、直前に注文した人が責任払いになって、伝票ごと押し付けて「次の店行くぞー!」と終電までハシゴを繰り返すイメージですね。

また、同じ料理しか手札になくて出せない場合も、「あおいそ」と発声して引き取らなくてはなりません。100~900円の料理カードをすべて注文できた場合は、「たのめナイン!」と発生して、ほかの全員にワリカンで押し付けます。こうして山札がなくなり、誰か1人の手札がなくなったらそこでゲームは終了。押し付けられた注文カードの枚数が一番多い人が負けになります。

――注文金額の合計じゃないんですね?

チカール そうなんです。最後は運動会の玉入れの集計みたいに、手持ちのカードを1枚ずつ出し合っていくと盛り上がると思いますよ。誰でもワイワイ盛り上がれるゲームにしたかったので同人誌経験のあるユタさんにマンガのマニュアを描いてもらったり、マニュアルにQRコードを付けてスマホで読み取ることで、専用の電卓アプリが呼び出せるようになっていたりします。さらに遊びやすくなるので、ぜひ試してみてください!

『たのめナイン』のマニュアルと電卓サイト『たのめナイン』のマニュアル。マンガでわかりやすく、参加人数別のルールも書かれている。左下のQRコードを読込むと電卓サイト(右)に飛べます。

 

クニツィアにあこがれて!

――「ごちです!」とか「おあいそ」とか、声を出すところも盛り上がる要因ですね。思いついたのは、やっぱり居酒屋で飲みながら?

チカール 実はこのゲームはdaiという高校時代の友人との共作で、「思いついたものがあるから見てくれない?」って持ちかけられて、喫茶店で話を聞いたのがきっかけだったんです。最初は全然違う数字を使ったゲームだったんですが、「こうした方がいいんじゃない?」という話を繰り返していったら、その場でどんどん変わっていって今の形になり、「これはすごいぞ……! 絶対に出したほうがいい!」って盛り上がって。

――居酒屋じゃなくて喫茶店?(笑) ゲームシステムが最初にあって、そこにテーマを肉付けしていったんですね。

チカール 最初のアイデアは算数をテーマに、数字を組み合わせて式を作るゲームだったんです。1~9の数字と四則演算記号があって、「3×4+8=20」のように式の一部をカードで書き換えていって、10の倍数を作ることができたら点が入るようなルールです。だけど近い内容のゲームを見たことがあったし、「もっとシンプルでいいだろう。むしろ足し算だけでいいんじゃないか?」と要素をどんどん削っていって。

そして今のルールになり、「押し付けられてイヤなものは何だろう?」っていろいろアイデアを出しながら考えて、「お会計を押し付け合うゲームは?」とたどり着いた。1~9の数字カードを100~900円の料理に置き換えて、「ごちです!」と言い合いながら押し付けられたら楽しいと考えたんです。そうしたら見事にゲーム内容とフレーバーがハマったんですね。

あとは、どこまで敷居を下げられるか試行錯誤して、ユタさんに旨そうな料理のイラストを描いてもうために「もっとシズル感を……!」みたいなやり取りを、深夜に1ヵ月以上延々と繰り返しました(笑) そのかいもあって「これを遊ぶと、美味しそうでお腹が空く!」って言ってもらえたりして、うれしい限りですね。

――元になったゲームはありますか?

チカール コレが元というものはないんですが、ライナー・クニツィアさんの『ZERO』のようにシンプルで、かつ何度も繰り返しプレイしたくなる作品が好きです。『たのめナイン』を遊んでいただいた方に「クニツィアっぽいね」って言われたことも、すごくうれしかったですね。

特に好きな作品は『モダンアート』です。というよりも、クニツィアさん本人が好きで、あれほど精力的に作品を作り続け、多彩でありながらも軸がぶれない。そんな姿にあこがれていて、自分もこれからいろいろな作品を出していきたいなって思ってます。

ライナー・クニツィア:世界的に有名なボードゲームデザイナー。非常に多作でかつドイツゲーム大賞などの受賞作品も多い。代表作は『モダンアート』『指輪物語』『アーサー王』『ペンギンパーティ』など。

※『ZERO』(JELLY JELLY CAFEのボードゲーム紹介記事)
http://jellyjellycafe.com/games/zero

※『モダンアート』(JELLY JELLY CAFEのボードゲーム紹介記事)
http://jellyjellycafe.com/games/modernart

チカール 『たのめナイン』の開発は、喫茶店で話し合ったその場でルールは9割がた完成して、その日に徹夜して翌日には印刷所に駆け込んでモックアップを作りました。「絶対面白いから!」って仲間を巻き込んでテストプレイしたらやっぱり盛り上がって好評で。その後に「お茶」と「お冷」のカードを追加したりもしたんですが、一番時間をかけたのはイラストで、テストプレイはほとんど必要なかったですね。すんなりと遊べて、これはおもしろい、盛り上がるって。議論の余地なく製品化できた珍しいケースです。ここまで高く評価いただけるとは思いませんでしたが。

――たのめナインはこれが完成形ですか? 拡張版とか続編の予定は?

チカール ないですね。「特殊カードを増やしたら?」とか「次はファミレス編?」とかって言われることもあるんですが、自分自身が拡張とか続編があまり好きじゃなくて、単体として最初から完成したものを提供したいと思ってるんです。一度リリースした作品に手を加えるより、同じ時間と手間をかけるなら新しいゲームを作りたいなって。もちろん愛着はありますけど、そのほうが自分自身もワクワクしますからね。


ゲームへの熱い思いを語ってくれたチカールさんたち、するめデイズのみなさん。インタビューの後には、チカールさんが現在制作中の『ポコン(仮称)』や、するめデイズさんから発売中のゲームを数時間遊ばせてもらいました。

ポコン(仮称)一足早く『ポコン(仮称)』で遊ばせていただきました。挟まれてるハズなのにひっくり返ってないコマに注目!

ゲームマーケット2017春に出展を目指しているという『ポコン(仮称)』。キツネとタヌキが表裏に描かれたいわゆるリバーシ(オセロ)ですが、その中に両面キツネと両面タヌキのコマが混ざっているのがミソ。お互いに1手ずつ自分のコマで相手を挟むように置き、ひっくり返すのですが、両面キツネ(あるいはタヌキ)のコマをひっくり返してしまうと、その時点でターンエンドとなり、その先にあるコマは返せずに残ってしまいます。どこに両面コマを仕込むかという心理戦と記憶力がカギの、するめデイズらしいゲームです。2人でタッグを組んで4人でプレイできるのも盛り上がります。

ほかにもニルギリさんとサイコロKさんがそれぞれゲームを制作中とのこと。ゲームマーケット2017 春のゲームマーケットでも、するめデイズさんの活躍が楽しみですね。

するめデイズさんのブログ
http://sssaikou2003.blogspot.jp/

するめデイズさんのTwitter
https://twitter.com/surume_days

くまくま

元IT系出版社の編集者。退職後に人狼やアナログゲームに ハマって各種イベントやボードゲームカフェに出没している。
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